カウンター内にいる真田。
入ってくる赤鬼。手にはブロック。
赤鬼「…ちす」
真田「えっ?ああおつかれ。なに、ちょっと久しぶりじゃん」
赤鬼「そっすね」
真田「ちょっとは真面目に仕事するようになりましたか〜?よかよかですよ」
赤鬼「そっすね」
真田「なに、座れば」
赤鬼「…」
真田「どうかした?」
赤鬼「はるが、今朝。渡りました」
真田「…」
赤鬼「おかあさんが、迎えに来て。ちゃんと、一緒に」
真田「…そう」
茶を入れる真田。
間。
真田「ほら、とりあえず座ろ」
赤鬼「ざす」
赤鬼「…今朝、綺麗で優しそうな人が来て。立ってるところ、はるが先に気が付いて」
真田「うん」
赤鬼「おかあさん、『待たせてごめんね、ごめんね』って何度も言ってて」
真田「うん」
赤鬼「あそこは親を待つ場でもあるから。でも皆すごく長く居るんで、俺聞いては居たけど、迎えに来てもらえた子見るの初めてで」
真田「うん」
赤鬼「一緒の交通事故だったらしいです。だからおかあさん頑張ってたけど、でもこんなに早く、きて」
真田「ああ」
赤鬼「あいつ、はるじゃなくて、本当は春樹って言うらしいです。自分でハルとしか言わないから、俺知らなくて」
真田「うん」
赤鬼「…めでたいです」
真田「そうだな」
赤鬼「また、会えるといいな」
真田「うん」
赤鬼「きっと次に来るときも、俺きっと居るから」
真田「そうか」
赤鬼「でも、今度は今回の記憶とかしっかり上書きされるくらい、長生きしてほしい」
真田「そうだなあ」
赤鬼「その頃には俺も、あっちで偉くなってて。 賽の河原じゃなくて向こうにいてさ」
真田「ふふ」
赤鬼「あいつがおじいちゃんになってても、俺はきっとわかるから」
真田「そうだね」
赤鬼「その時は真田さんは、もう転生中だろうなあ」
真田「いやいやーわかんないよ?」
赤鬼「だめっすよ、それまでにはちゃんと向こうに渡ってそんで転生して、真田さんにも長生きしててほしい」
真田「…」
赤鬼「真田さんが戻る頃にも、きっとまだまだ俺いるっすよ」
真田「そうかね」
赤鬼「この間、鬼の1番上の先輩が、やっと終わったんです」
真田「そうなの」
赤鬼「本当に、長い勤めが終わったらまた人間になれるんだって、不思議な感じでした。
すごい優しい鬼で、めっちゃ世話になった先輩で。逆に、何したら鬼になることがあるのってくらい優しくて」
真田「うん」
赤鬼「でも仕事はめっちゃ出来る鬼で、かなり深い所でいい不条理を生み出す鬼でした」
真田「すごいね」
赤鬼「俺もあんな風になれたら、また人間になれるのかなあ。いや、終わる頃にはあんな風になってたい」
真田「そうだねえ」
赤鬼「俺、本当に何を犯して鬼になったのかなってまだ気になっちゃうんですよ」
真田「うん」
赤鬼「でも、自分たち鬼は鬼になる時、人間の思い出もその罪も忘れた所からスタートだから」
真田「うん」
赤鬼「一心に務めて沢山の人を手伝って沢山見送ったら、いつか、そういう事も気にならなくなるかな」
真田「どうだろ、そうだといいな」
赤鬼「ね。そうなりたいっす」
秋へ